2014年7月13日日曜日

重曹で作る米ぬか石けん 考察その1

ちょっと固い話ですが、備忘録なのでご容赦を。

[石鹸とは]
手作り石けんに興味があって本もいくつか買って読んでみた。
要は石けんとは脂肪酸の塩(脂肪酸ナトリウムや脂肪酸カリウム)のことで油(脂肪酸)にアルカリを混ぜて作る。この脂肪酸が石鹸になる化学反応のことを鹸化という。
もうちょっと詳しくいうと、鹸化とは「油脂(脂肪)を水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどの塩基を使ってグリセリンと高級脂肪酸塩(カルボン酸塩、石鹸)に加水分解することを指す」(Wikipedia「鹸化」より)
ちなみに化学式は
 R-COOCH2CH(OOC-R)CH2OOC-R + 3 NaOH → C3H5(OH)3 + 3 R-COO-Na
 R=適当なアルキル基
だそうです。
高校卒業以来使っていない拙い化学の知識とGoogle先生とWikipedia先生の力を借りて解釈すると、左辺の「R-COOCH2CH(OOC-R)CH2OOC-R」はトリアシルグリセロールといって単純脂質に属する中性脂肪の一種。これと苛性ソーダ(NaOH)が反応すると右辺の「C3H5(OH)3」と「3 R-COO-Na」になるのですが、「C3H5(OH)3」はグリセリンのことです。ですので「3 R-COO-Na」が石鹸成分になるわけです。
ここで注目するのはNaの行方。左辺にいたNaは右辺で全て石鹸成分に入っています。(←この話はあとで使います)

[鹸化価]
石けん作りのレシピ(材料配分)を作る際に欠かせない「鹸化価」という数値があります。
これは油を鹸化するのに必要な苛性カリの質量を表す定数で、油の種類ごとに鹸化価がある。(「鹸化価 表」などのキーワードでぐぐると一覧表がいっぱい出てきます)
鹸化価は「1gの油を鹸化するのに必要な苛性カリの質量(単位:mg)」というのが定義で、一般的な食用油だと以下の様になります。
 オリーブ油:191
 キャノーラ油:187
 グレープシード油:188
 ひまわり油:190
 こめ油:188
大体190前後ですね。
鹸化価を1000分の1にしてやると「1gの油に必要な苛性カリのg数」になって、食用油だとおよそ0.19gということになります。これに油の質量をg単位でかけてやれば必要な苛性カリの質量がわかるという寸法です。
例えばオリーブ油500gで石鹸を作りたかったら
 500 x 0.191 = 95.50g
の苛性カリが必要になる、ということです。
この鹸化価は作った石鹸に残留する油分やアルカリの量を少なくするためには重要で、前田さんの本のコールドプロセスで作る手作り石鹸のレシピはほぼ必ず鹸化価から割り出した苛性ソーダの質量より若干少なくしてあります(85〜95%)。これは肌にやさしい油脂を残すとともに苛性ソーダの残留を懸念してのことだと推察されます。(苛性ソーダはタンパク質を分解する=肌や肉を溶かす。水溶液の場合濃度にもよるが、目に入った場合は失明のおそれもあるし、肌について放置していると肌や肉を侵食し火傷状態になる)

[鹸化価の換算]
鹸化価は苛性カリ(水酸化カリウム:KOH)を基準としていて、そのままでは他のアルカリには使えません。この鹸化価は使おうとするアルカリの種類によって換算してやる必要が出てくるということです。
ところで、化学反応は基本的に分子量を基本に考えます。また、苛性カリを使った鹸化における化学反応は上記の化学式の左辺の「NaOH」が「KOH」に、右辺の「Na」が「K」に変わっただけです。よって「K」を含む「KOH」の必要な分子数を「Na」を含む「NaOH」の必要な分子数に換算してやれば求めることができます。

しかし「分子数っていわれてもどうすりゃいいの…」と思うところですが、ここはちゃんと便利な方法があります。
化学の世界では質量も重要ですが、分子量も重要です。反応は分子と分子の間で起こるものですから。そこで「mol」(モル)という便利な単位が登場します。難しい話から先にすると、SI単位系の定義は「0.012 キログラムの炭素12の中に存在する原子の数と等しい数の要素粒子又は要素粒子の集合体(組成が明確にされたものに限る)で構成された系の物質量」となっています。これはすごーく簡単にしていえば1molはある一定の分子数、ということです(ここでその数が幾つかはおいといて…)。そして便利なことに主要な物質の分子は1molあたりの質量(g)がわかっています。
例えば
 苛性カリ(KOH):56.10g/mol
 苛性ソーダ(NaOH):39.99g/mol
 重曹(NaHCO3):83.98g/mol
などです。
この「1molあたりの質量」はWikipediaで調べる事ができます。Wikipediaのそれぞれの物質のページの右側にある「特性」欄にある「精密質量」か「モル質量」のところ(物質によって表記が異なるが、単位が「g mol-1」の項目)にある数値がそれです。
これを使って使うアルカリの鹸化に必要な量が割り出せます。
換算式は以下のようになります。
 式1:(使うアルカリの鹸化価の換算値)=(鹸化価)÷(56.10)x(使うアルカリの1molあたりの質量)
 式2:(必要なアルカリ量[g])=(油の質量[g])x(式1の鹸化価の換算値)÷1000
例えば、オリーブ油500gを苛性ソーダで鹸化する場合、鹸化するのに必要な苛性ソーダの量は
 式1:鹸化価換算値=191÷56.10x39.99=136.15
 式2:苛性ソーダ必要量=500x136.15÷1000=68.08
になります。

ここから重曹で作る米ぬか石鹸の疑問に移ろうかと思いましたが、長くなったので、その2につづく、です。

参考文献(Amazon)
オリーブ石けん、マルセイユ石けんを作る」前田京子
石けんのレシピ絵本」前田京子
肌に髪に『優しい石けん』手作りレシピ32」小幡有樹子
アロマで楽しむ!美肌になろう!手作りのリッキドソープとクレイ」中村純子
参考サイト(Wikipedia)
 石鹸
 苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)
 苛性カリ(水酸化カリウム)
 重曹(炭酸水素ナトリウム)
 炭酸ナトリウム
 mol


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