2014年7月20日日曜日

実験!重曹で石けんは作れないのか? 

重曹で作る米ぬか石けん 考察その2を書いていて思ったのですが、重曹で石けんって作れないもんですかね?

そう思ってぐぐっていたらトライしている方のBlogを見つけました
  黒猫そーぷ:5・実験!重曹石鹸
うーむ。結論は「重曹で石けんはできない」かぁ…。
でも、もうちょっと温度を上げて、重曹の量もpH換算じゃなくて、mol質量換算にすればもしかして…。
…なんて考えていても仕方ないので、やってみました。

以下実験過程を記録しておきますが、結論から言いますと
「できませんでした」
です。

まずレシピと実験工程を考えました。
−−−
レシピ
油脂 合計300g
 ひまわり油 150g
 オリーブ油 150g
重曹 86g ※1
アルコール 75g(油の25%)※2
水 400g ※3

※1:油脂の量と鹸化価から求めました。
(油脂)300gx(鹸化価)0.190x(mol質量換算)(84/56)=85.5g≒85g
※2:アルコールを加えると鹸化が促進されるという実験記事をみて入れてみることにしました。アルコールの量は中村純子さんの本で紹介されているリキッドソープのレシピで使われている油脂とアルコールとの比率を質量換算して求めました。
※3:コールドプロセスでは水:油=72:28(水≒油の40%)が推奨されています。
コレに従うと油300gの40%=120gになるんですが、重曹の溶解度は水が100℃の時に236g/Lなので120gの水には28.32gしか溶けず、これだと86gの重曹が溶け切りません。溶解度から逆算すると水は364gは必要になります。蒸発する分も考慮して400gにしました。
−−−
実験工程
1.油を測り湯煎にかける。
2.水を沸騰させて重曹を加え、泡が落ち着くまで煮る。
3.1.に2.とアルコールを混ぜる。(ブレンダーを使用)
4.放置。時々様子を見る。
−−−

では実際の実験経過です。
まず油を測って湯煎しました。
湯煎は大きめの深底フライパンに水を張って火にかけながら行いました。

油にアルコールと溶かして煮立てた重曹(熱分解して炭酸ナトリウムになっている)を入れて10分間混ぜたところです。
表面は泡が浮いています。
泡をかき分けてみると乳白色でサラサラの液体になっていました。

湯煎したまま(フライパンを弱火にかけた状態)30分放置。
若干油が分離して浮いてきていましたので、また混ぜました。
粘度は変わらずサラサラのまま…。

さらに30分放置。
前と同じで油が分離していました。
また混ぜて、湯煎の火を消してこのまま朝まで(約10時間)放置。
結局、朝になっても変化なしでした。
残念。

試しに失敗した油ともなんとも言えないものを直火にかけてみました。
窯焚き石けんになるかな?と思ったのですが…。
結果は下の写真の通り、茶色くてちょっと粘度が増したものが出来ただけ。
途中泡で鍋いっぱいになったけど、そのまま煮込んでいくと泡も落ち着いたので、もしかして!と思いましたが、やっぱりダメでした…。

というわけで、油+重曹では石けんは出来ませんでした。
残念。
苛性ソーダが定番になっているのはそれなりに理由があるんですね。
なお、苛性ソーダ以外にも珪酸ソーダでも石けん作れるようです。
 田川市HP:食用廃油からの石鹸の作り方(オルト珪酸ナトリウムを使った廃油石鹸)
今度はこっちかなぁ…。


その他の参考にしたサイト
むぎちゃんの石けん日記:No.7 エタノールと鹸化
石けん学のすすめ:4.けん化理論
石けん学のすすめ:8.粉石けんと洗濯のメカニズム
石鹸百科:酸性・中性・アルカリ性って?pHって?
くまぐま☆なちゅ:鹸化反応の速さ(3)-マニアックス- [石けんまわりの化学(5)]


2014年7月19日土曜日

とりあえず作ってみた「重曹で作る米ぬか石鹸」はどうなった?

洗い物も溜まってきたので「重曹で作る米ぬか石けん」を使ってみました。
その結果の報告など。

まずは5日間放置した様子から。
こちらの記事でも書きましたが、レシピ通り作ったもの(写真右)と途中で水を追加したもの(写真左)があります。レシピ通りのものは乾燥して縮んできていて、使い捨て容器からすぐ外れそうです。水を追加した方はこの5日間ではかたまりませんでした。
両方ともに表面は乾燥して硬くなっています。

次は容器から出したところです。
写真左の水を加えた方は容器にくっついてしまいうまく外れませんでした。
レシピどおりの写真右は、ころっと外れてくれました。
両方とも、底の方は5日前とさほど変わっていません。
おそらく水分が下に沈んだんでしょう。

一応「石けん」なので泡が立つか確かめてみました。
ダメですねぇ。水に溶けるんだけどねぇ。
乾燥して硬くなっていた部分は溶かすのにも苦労します。
前評判通り見た目はクレンザーっぽいです。
でもザラザラ感は無いです。
どっちかというとフワフワ。
では、コレで油ギトギトの皿を洗ったらどうなるか?
…。
なんと、普通に洗えました。
ガラスのコップも洗ってみましたが、洗って指でこするとキュッキュッと音がするぐらい、ちゃんと汚れが落ちました!

結論
 ・米ぬか石鹸は泡立たないがキッチン石けんとして使える
 ・杉原先生のレシピはそのままで。不安になって水なんか足す必要なし。
 ・作ったまま(柔らかいまま)のほうが使いやすい。

追記
重曹で米ぬか石けんが作れるなら、重曹で普通の石鹸は作れないのかな?と疑問に思い実験してみました。経過と結果はこちら。


2014年7月16日水曜日

重曹で作る米ぬか石けん 考察その2

「重曹で作る米ぬか石けん 考察その1」はこちら

さて、考察の続きです。
前の記事「重曹で作る米ぬか石鹸をとりあえず作ってみる」にも書きましたが、あちこちで見かける「杉原先生の米ぬか石けんのレシピと作り方」によると、材料は
 水:600cc
 重曹:20g
 米ぬか:200g
となりますが、この材料の中で油を含むものは米ぬかです。
こめ油専門店のHPなどによりますと、米ぬかに含まれる油分は大体15%〜20%らしいです。ということは米ぬか200gに含まれる油脂は30gから40g。
仮に油脂がこめ油で35gだとして、鹸化価から換算される必要苛性カリの量は
 35gx0.188=6.58g
これを重曹の場合に必要な量に換算すると
 6.58g÷56.10x83.98=9.85g
となるんです。
杉原先生のレシピだと重曹は鹸化に必要な量のおよそ2倍入ることになります。
ちょっと、重曹多すぎ?

あと、水分なんですが、石鹸のJIS規格「JIS K3302:1985」によると固形石鹸の水分量は30%以下となっています(=普通に売っている石鹸の含有水分量は30%以下になっているということです)。前田京子さんの本でも水:油=28:72を推奨されています。
前田さんの本で紹介されているのはコールドプロセス(加熱しない)なので水分はほとんどそのまま残ると考えていいでしょう。かたや杉原先生の米ぬか石けんはバリバリのホットプロセス。作成工程で水分が蒸発してしまうことも想定して多めにするのはいいのですが、35gの油脂に対して600gの水はちょっと多すぎでは?と思ってしまいました。

しかし、落ち着いて考えてみると米ぬかに含まれる油脂も「15%〜20%」というのはあくまで一般論ですのでもっと多いこともありえます。杉原先生のレシピはアルカリを過多にしておいてブレ幅の大きい米ぬかの油脂分を確実に油脂を鹸化する作戦ともとれます。また水の量も蒸発したり米ぬかの油脂以外の粉っぽい成分に水分が取られてしまったりすることも考えると、十分多めにしておくことも重要かと思えます。
杉原先生の米ぬか石けんレシピは台所用石けんに限定すれば、よく練られたレシピかもしれませんね。

2014年7月13日日曜日

重曹で作る米ぬか石けん 考察その1

ちょっと固い話ですが、備忘録なのでご容赦を。

[石鹸とは]
手作り石けんに興味があって本もいくつか買って読んでみた。
要は石けんとは脂肪酸の塩(脂肪酸ナトリウムや脂肪酸カリウム)のことで油(脂肪酸)にアルカリを混ぜて作る。この脂肪酸が石鹸になる化学反応のことを鹸化という。
もうちょっと詳しくいうと、鹸化とは「油脂(脂肪)を水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどの塩基を使ってグリセリンと高級脂肪酸塩(カルボン酸塩、石鹸)に加水分解することを指す」(Wikipedia「鹸化」より)
ちなみに化学式は
 R-COOCH2CH(OOC-R)CH2OOC-R + 3 NaOH → C3H5(OH)3 + 3 R-COO-Na
 R=適当なアルキル基
だそうです。
高校卒業以来使っていない拙い化学の知識とGoogle先生とWikipedia先生の力を借りて解釈すると、左辺の「R-COOCH2CH(OOC-R)CH2OOC-R」はトリアシルグリセロールといって単純脂質に属する中性脂肪の一種。これと苛性ソーダ(NaOH)が反応すると右辺の「C3H5(OH)3」と「3 R-COO-Na」になるのですが、「C3H5(OH)3」はグリセリンのことです。ですので「3 R-COO-Na」が石鹸成分になるわけです。
ここで注目するのはNaの行方。左辺にいたNaは右辺で全て石鹸成分に入っています。(←この話はあとで使います)

[鹸化価]
石けん作りのレシピ(材料配分)を作る際に欠かせない「鹸化価」という数値があります。
これは油を鹸化するのに必要な苛性カリの質量を表す定数で、油の種類ごとに鹸化価がある。(「鹸化価 表」などのキーワードでぐぐると一覧表がいっぱい出てきます)
鹸化価は「1gの油を鹸化するのに必要な苛性カリの質量(単位:mg)」というのが定義で、一般的な食用油だと以下の様になります。
 オリーブ油:191
 キャノーラ油:187
 グレープシード油:188
 ひまわり油:190
 こめ油:188
大体190前後ですね。
鹸化価を1000分の1にしてやると「1gの油に必要な苛性カリのg数」になって、食用油だとおよそ0.19gということになります。これに油の質量をg単位でかけてやれば必要な苛性カリの質量がわかるという寸法です。
例えばオリーブ油500gで石鹸を作りたかったら
 500 x 0.191 = 95.50g
の苛性カリが必要になる、ということです。
この鹸化価は作った石鹸に残留する油分やアルカリの量を少なくするためには重要で、前田さんの本のコールドプロセスで作る手作り石鹸のレシピはほぼ必ず鹸化価から割り出した苛性ソーダの質量より若干少なくしてあります(85〜95%)。これは肌にやさしい油脂を残すとともに苛性ソーダの残留を懸念してのことだと推察されます。(苛性ソーダはタンパク質を分解する=肌や肉を溶かす。水溶液の場合濃度にもよるが、目に入った場合は失明のおそれもあるし、肌について放置していると肌や肉を侵食し火傷状態になる)

[鹸化価の換算]
鹸化価は苛性カリ(水酸化カリウム:KOH)を基準としていて、そのままでは他のアルカリには使えません。この鹸化価は使おうとするアルカリの種類によって換算してやる必要が出てくるということです。
ところで、化学反応は基本的に分子量を基本に考えます。また、苛性カリを使った鹸化における化学反応は上記の化学式の左辺の「NaOH」が「KOH」に、右辺の「Na」が「K」に変わっただけです。よって「K」を含む「KOH」の必要な分子数を「Na」を含む「NaOH」の必要な分子数に換算してやれば求めることができます。

しかし「分子数っていわれてもどうすりゃいいの…」と思うところですが、ここはちゃんと便利な方法があります。
化学の世界では質量も重要ですが、分子量も重要です。反応は分子と分子の間で起こるものですから。そこで「mol」(モル)という便利な単位が登場します。難しい話から先にすると、SI単位系の定義は「0.012 キログラムの炭素12の中に存在する原子の数と等しい数の要素粒子又は要素粒子の集合体(組成が明確にされたものに限る)で構成された系の物質量」となっています。これはすごーく簡単にしていえば1molはある一定の分子数、ということです(ここでその数が幾つかはおいといて…)。そして便利なことに主要な物質の分子は1molあたりの質量(g)がわかっています。
例えば
 苛性カリ(KOH):56.10g/mol
 苛性ソーダ(NaOH):39.99g/mol
 重曹(NaHCO3):83.98g/mol
などです。
この「1molあたりの質量」はWikipediaで調べる事ができます。Wikipediaのそれぞれの物質のページの右側にある「特性」欄にある「精密質量」か「モル質量」のところ(物質によって表記が異なるが、単位が「g mol-1」の項目)にある数値がそれです。
これを使って使うアルカリの鹸化に必要な量が割り出せます。
換算式は以下のようになります。
 式1:(使うアルカリの鹸化価の換算値)=(鹸化価)÷(56.10)x(使うアルカリの1molあたりの質量)
 式2:(必要なアルカリ量[g])=(油の質量[g])x(式1の鹸化価の換算値)÷1000
例えば、オリーブ油500gを苛性ソーダで鹸化する場合、鹸化するのに必要な苛性ソーダの量は
 式1:鹸化価換算値=191÷56.10x39.99=136.15
 式2:苛性ソーダ必要量=500x136.15÷1000=68.08
になります。

ここから重曹で作る米ぬか石鹸の疑問に移ろうかと思いましたが、長くなったので、その2につづく、です。

参考文献(Amazon)
オリーブ石けん、マルセイユ石けんを作る」前田京子
石けんのレシピ絵本」前田京子
肌に髪に『優しい石けん』手作りレシピ32」小幡有樹子
アロマで楽しむ!美肌になろう!手作りのリッキドソープとクレイ」中村純子
参考サイト(Wikipedia)
 石鹸
 苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)
 苛性カリ(水酸化カリウム)
 重曹(炭酸水素ナトリウム)
 炭酸ナトリウム
 mol


重曹で作る米ぬか石鹸をとりあえず作ってみる。

手作り石けんに興味があり、いろいろとぐぐっていたらこんな記事を見つけた。
「重曹で米ぬか石けん」の作り方
さらにぐぐってみると、結構同じような作り方だが出てくる。
どうやら杉原先生という方のHPで公開していたらしい。(現在は残念ながら掲載なし)
手作り石けんといえば鹸化のためのアルカリ剤として苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)や苛性カリ(水酸化カリウム)を使うのが一般的だが、この米ぬか石鹸では重曹(炭酸水素ナトリウム)を使うのが特徴的。苛性ソーダや苛性カリは毒物及び劇物取締法で劇物に指定されていて、薬局で買えるらしいが印鑑が必要。試しに近所のドラッグストアで訊いてみたが最近は取り扱っていないらしい。ただの強塩基だから取り扱いさえ気をつければそう危ないものでもないはずだけど、やっぱり悪意をもって使う人もいるんでしょうねぇ。
さて、そんな苛性ソーダを使わないというのが気に入って、試しに作って見ることにしました。

まず、あちこちのBlogで掲載されている「杉原先生の米ぬか石けんのレシピと作り方」です。
−−−
材料
 水:600cc
 重曹:20g
 米ぬか:200g
作り方
 (1)水を沸騰させて、重曹を溶かす
 (2)(1)に米ぬかを少しずつ混ぜる
 (3)10分くらい混ぜる
−−−
…えらい簡単な説明です。
早速やってみます。

まず、作業場所(台所)の換気を確保。
化学系は専門外なのでレシピを見ただけでは何が発生するかわからず、とりあえず安全確保のためです。(化学系の人に笑われちゃうかな?)

材料を測ります。

少し大きめの深底フライパンで水をガスレンジで煮立たせます。
沸騰しはじめたら重曹を投入。
この時、シュワシュワ・ぶくぶくと泡が立ちます。
この工程で重曹(炭酸水素ナトリウム)が熱分解して炭酸ナトリウムになるそうです。

泡が落ち着いたらとろ火にして米ぬかを少しづつ投入して混ぜる。
下の写真は半分ぐらい投入して、泡が落ち着いた状態です。
投入直後は思ったより泡がでて膨らんできました。

さらに全部入れて混ぜたのが下の写真。
なんだか固まり過ぎのような…。
ゆっくりしすぎて水分が蒸発しすぎたかなぁ。
実験のため、上の写真の状態で「あちっ、あちぃ〜」と言いながらも半分を使い捨て容器に詰める。

予定外だがこのままでは一つにまとまりそうにないので、残った半分に約200ccの水を追加。引き続きとろ火で混ぜる。
はじめはゆるいペースト状だったけど、少し硬くなってきてなんとかまとまりそう。
水を追加する前に10分以上混ぜているので、5分ほどとろ火にかけたままぜる。

10分ほど放置して触れる程度に冷めたので、使い捨て容器に入れる。
手前が最初にとりわけた物で、奥が水を追加した物。

とりあえず、窓辺の日の当たる場所で乾燥です。

今回は型の代わりに使い捨て容器に入れましたが「茶こし袋に入れて使う」とか「これはクレンザーだ」などとどこかのBlogに書いてありましたので、おそらくぼそぼその粉状になるんではないかと予想しています。

さて、作ってみた感想としては…

  • 沸騰し始めたお湯に重曹を投入した後「泡が落ち着く」まで待ったが、沸騰の泡なのか熱分解反応の泡なのかよくわからなかった。つまり見切りで米ぬか投入の工程に入った。
  • 鍋は大きい方がいい。米ぬかを入れた時に思ったより泡が膨らんできて、こぼれそうになった(一時的に火から外した)。ちなみに今回使ったのは直径25cmの深底フライパン。

といったところです。

2〜3日放置してみて、出来上がり具合などを後日報告します。→結果はこちら。

Prologue

::Prologue::
多忙なサラリーマン生活の中「そんなの買ってきたほうが安いんじゃないの?」という声をよそにやめられないDIY。だって、市販の製品にちょうどいいものがないんだもの!自分で作ったほうが使い勝手がいいんだ!趣味なんだ!…
そんな性分が幸い(災い?)して日々何かを作っているエンジニア系サラリーマンの作った物のレシピと工程を備忘録代わりに記録するため、このBlogを始めたいと思います。
ちゃんと備忘録になって、さらに誰かの参考になればなお嬉しい限りです。